環境問題とは?環境問題の理由と種類

  • エネルギーと環境問題

ここ数年で注目されているSDGs。このSDGsに強く関連するのが環境問題です。環境問題というと、漠然としたイメージしかない方が多いのではないでしょうか。今回は環境問題の定義や注目された理由、種類を紹介します。

環境問題とは

環境問題とは、人間活動によって引き起こされる自然環境の変化や破壊が原因で、生態系や人間の健康、社会経済に悪影響を及ぼす問題のことを指します。そもそも環境の定義は難しいものですが、一般的には「人間または生物をとりまき、それと相互作用を及ぼし合うものとして見た外界」と定義されることが多いそうです。(広辞苑参照)

日本だけではなく、世界中で多くの環境問題が注目されており、さまざまな取り組みが行われています。

注目された理由

そもそも、なぜ環境問題が注目されたのでしょうか。

世界的な環境問題のきっかけとなったのは、18世紀後半に始まった産業革命です。産業の発展に伴い化石燃料(石油・石炭)を大量に消費するようになりました。その結果、経済が発展してきた一方で、大気汚染や水質汚濁などの公害が発生し環境の悪化も進んでしまったのです。

 

日本では戦後の高度経済成長期による工業化の発展がきっかけです。工場から排出された有毒な化学物質や重金属により、深刻な公害問題が発生しました。

 

どの国も独自の対策を行っていましたが、公害は国境をも超え、世界的な問題になりつつありました。そんな中、スウェーデン政府が国連に対し、人間環境問題を議論する場の開催を提案し、国連人間環境会議(ストックホルム会議)が開催されました。

 

この会議では、環境に対する理念と原則の設立と、UNEP(国連の環境保護組織)の創設という2つの成果を生み出しました。

10年後にはUNEP開催による国連環境計画管理理事会特別会合(ナイロビ会議)が開催。更に10年後には地球サミットが開催され、年々世の中の環境に対する意識が高くなったのです。

 

地球サミットは1992年以降、10年ごとに開催され、数々の対策が議論されてきました。近年よく聞かれる、SDGsも2012年の地球サミットで議論が始まり、2015年の国連サミットで採択されました。SDGsは社会・経済・環境の3つを主軸とし持続的な開発を目的とする、世界共通言語となりました。このSDGsを通して、政府や企業、様々な団体の環境への関心がさらに高くなったのです。

現在の環境問題

現在、問題視されている環境問題は、大きく分けて7つです。

 

海洋環境保全

化学物質・有害廃棄物の越境移動

オゾン層の保護

生物多様性

野生動植物

森林、砂漠化

酸性雨

外務省HP参照)

 

下記でそれぞれを簡単に説明します。

リンクから詳しく説明したコラムページに飛べるものもあるので、気になった方はぜひ参考にしてみてください。

海洋環境保全

海洋環境保全とは、その名の通り、海の環境を守る取り組みのことを言います。

 

海を汚染しないことはもちろんのこと、海の資源を管理することも取り組みの一つとなっています。様々な取り組みの中でも、現在1番注目されているのは、海洋プラスチックごみによる海洋汚染です。

海洋プラスチックごみとは人間によって廃棄されたプラスチック製のごみのことをさします。有名な話だと、ポリ袋をクラゲと間違えて食べたカメが死んでしまったり、クジラが大量にプラスチックごみを食べて死んでしまったりする話があります。

 

海の生態系はもちろんのこと、人体に影響しかねないマイクロプラスチック問題も存在し、海洋環境保全は、特に注目されている環境問題でもあります。

化学物質・有害廃棄物の越境移動

1970年代より欧米諸国を中心に有害な廃棄物を他国に放棄するということが行われていました。その結果、放棄された国では環境汚染が進み、かつ廃棄物の出所が分からないという問題が発生していました。

これは、発展途上国や経済発展の遅れている国々において、化学物質や有害廃棄物の処理が不十分であることが背景にあります。また、発展途上国側では、廃棄物処理を受け入れることで、経済的な利益を得ることができるため、越境移動が行われることがあります。

しかしながら、化学物質や有害廃棄物の越境移動は、その受け入れ側国や地域の環境・健康に深刻な影響を与えることも多々あります。例えば、違法に輸入された電子機器から、有害物質である鉛や水銀が漏れ出し、廃棄物処理場の周辺地域において健康被害が報告された例があります。

 

この問題に対して、OECD及びUNEPで検討された後、1989年に「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」が採択されました。

この条約は約2年に1度、内容を更新しています。2019年に規制物質として汚れたプラスチックごみが追加されたことは記憶に新しいです。また、発展途上国における廃棄物処理の支援や技術協力が行われることで、越境移動を防止する取り組みも進められています。

オゾン層の保護

オゾン層とは地球上空の外側の成層圏にある、オゾンの多い層のことです。オゾンは紫外線を吸収する力を持っており、太陽の紫外線から地上の生態系を守っています。

このオゾン層は通常、生成と消滅を繰り返し、適切な濃度を保っています。しかし近年では、人間によって生み出された有害物質によって、オゾン層は破壊され続けているのです。

 

この問題に対応すべく制定されたのが、1985年の「オゾン層の保護のためのウィーン条約」と1987年の「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」です。現在はオゾン層の破壊に関わる物質などは制限され、オゾン層の保護が進められています。

生物多様性

私たち人類は他の生物と共存し生きています。しかし近年では、人間の手によって、他の生物の生息環境や生態系の破壊により、絶滅の危機に瀕している野生生物も少なくありません。

このような事態に対して、生物多様性の保全や構成要素の持続可能な利用などを目的とした、生物多様性条約が制定されています。

 

また、植物や農作物の遺伝子に対しても保護することを目的とした、食料・農業植物遺伝資源条約も制定されており、すべての生き物を大切にすることも環境問題の1つと考えられています。

野生動植物

前述の生物多様性と近い部分はありますが、こちらに関する条約には野生動植物の絶滅をより具体的に示しています。

例えば、1973年にワシントンD.C.で採択された、ワシントン条約や1971年に湿地を守るために採択された、ラムサール条約等です。生物多様性と同じように、人間が他の生態系を破壊しないようにするための取り組みが行われています。

森林・砂漠化

森林破壊砂漠化も深刻な環境問題です。森林の減少に関しては1992年の地球サミットから問題視されています。森林には生態系を保護や、気候変動を緩和する役割があります。

しかし、森林面積は1990年~2015年の25年間に年々減少しています。森林が減ることにより、アフリカなどでの砂漠化も加速しており、より早い対応が必要とされています。

酸性雨

酸性雨とは酸性物質が溶け込み、通常より強い酸性を示す雨や雪、霧のことを言います。通常より強い酸性の為、生態系に悪影響を与えるのはもちろんのこと、建物や文化財を溶かしたり、錆びさせたりすることもあります。

酸性雨の原因は窒素酸化物や二酸化硫黄が化学反応した結果、硫酸や硫黄になり雨に溶け込むことです。窒素酸化物や二酸化硫黄は火山活動のような自然によって放出されることもありますが、化石燃料の燃焼によっても放出されます。

そのため、人間の工業活動によっておこる原因として、対策が必要になっているのです。

 

以上が、現在注目されている環境問題の理由と種類でした。

わたしたちができること

環境問題は世界規模で注視されていますが、私たちひとりひとりができることも多くあります。以下にいくつかの例を挙げます。

エネルギーの効率的な利用

家庭や職場でのエネルギーの効率的な利用に努めましょう。電気やガスを節約するために、LED照明や省エネ家電を使ったり、不要な電気製品はコンセントから抜いたりすることも非常に大切です。

交通手段の見直し

自動車やバイクなどの個人車両の利用を減らし、公共交通機関や自転車などのエコな交通手段を利用するようにしましょう。また、長距離移動の場合は、電車やバスを使うことで二酸化炭素の排出量を大きく減らすことができます。

5Rアクションの実施

5Rとはゴミを減らすための3Rに2つのRが加わったReduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)、Repair(リペア)、Refuse(リフューズ)の5つの単語の頭文字です。

これらの取り組みを行うことで、資源やエネルギーの節約、廃棄物の削減など、環境にやさしい生活が可能になります。

食生活の見直し

食物の消費について考えましょう。エコな食生活として、地産地消や食品ロスの削減に努めることができます。また、ミートフリーマンデーを取り入れて肉類の摂取を減らすなど、自分なりの工夫をしてみるのも良いでしょう。

環境にやさしい商品の選択

環境に配慮した商品を選ぶことも大切です。リサイクル素材を使用している製品や、化学物質を極力使用していない商品など、環境に配慮した商品を選ぶことで、地球環境を守ることができます。

商品選びの目安として「認証マーク」があります。

 

これらの取り組みは、私たち一人ひとりの力を合わせて、地球環境を守るために役立ちます。

まとめ

SDGsの浸透により、環境問題への関心はさらに高まりつつあります。大切なことは、なぜそうなってしまったのかを把握し、今後の行動に移していくことです。

世界のどこかで起きている事としてとらえるのではなく、自分事としてとらえ、環境問題の正しい情報を得て、身近なことから取り組んでいきましょう。