マイクロプラスチック問題とは?人体への影響は?原因と対策も解説

  • エネルギーと環境問題

丈夫で加工しやすいプラスチックは世界中で様々な製品に使われています。しかし、便利な反面、そのプラスチックゴミの一部は海へ流出し、分解されず半永久的に残ってしまいます。このことから近年問題視されているのが、マイクロプラスチック。

今回は、マイクロプラスチックの解説から問題視されている原因、対策まで、マイクロプラスチック問題に関わる様々な点を紹介します。

マイクロプラスチックとは

マイクロプラスチックとは、5㎜以下の微細なプラスチック粒子のことを指します。

素材はその名の通りプラスチックなので、紫外線に弱い、自然分解されない、軽く波風に流されやすいなどの特徴があります。

世界自然保護基金(WWFジャパン)での研究によると、プラスチックは数百年も分解されることなく環境中にとどまるとされています。特に細かいマイクロプラスチックは、回収することが特に難しいです。そのため、海洋生物の生態系に悪影響を及ぼすことが多々あります。

マイクロプラスチックの発生原因としては、加工される前のプラスチック粒や、自然環境内で小さな破片となったプラスチックなど、いくつかあるとされています。

マイクロプラスチックの種類と発生原因

マイクロプラスチックの発生原因は大きく2つあります。

 

・プラスチック製品の生産段階でできる一次的な原因(一次的マイクロプラスチック)

・自然の力によって生まれる二次的な原因(二次的マイクロプラスチック)

 

詳しくは以下の通りです。

 

  • 一次的マイクロプラスチック

様々なプラスチック製品を製造するために使われるプラスチック粒(レジンペレット)や製品の原材料として使用するために製造された小さなビーズ状のプラスチックを指します。

洗顔料や歯磨き粉に含まれるスクラブ剤にも、この小さく加工されたプラスチック(マイクロビーズ)が使用されているため、生活排水と一緒に流出してしまいます。

また、プラスチック製の合成繊維(ポリエステルなど)を使用し、製造された洋服やスポンジからも洗濯や洗い物の際に流れ出てしまっています。小さすぎるため、下水処理場のろ過装置でも拾うことができず、回収が非常に困難になっているのが現状です。

 

  • 二次的マイクロプラスチック

プラスチック製品が自然環境にさらされ、劣化し小さな破片となったものを指します。

発砲スチロールやペットボトル、ビニール袋などのもともと大きかったプラスチックゴミが、海に漂流・漂着し、時間の経過とともに紫外線や雨風によって粉々に小さくなります。

プラスチックごみの発生を抑え、マイクロ化する前であれば、ある程度の対策ができるとされています。

マイクロプラスチックによる影響

現在、世界中で海洋プラスチックゴミが問題視されており、SDGs(持続可能な開発目標)でも目標のひとつ「14:海の豊かさを守ろう」として掲げられています。プラスチックは分解されないため、小さく目に見えないほどのサイズになっても半永久的に海を漂い続け、海流に乗って世界中の海に拡散されてしまっています。そんなマイクロプラスチックは海洋生物だけではなく、私たち人体にも悪影響を及ぼす可能性があります。

マイクロプラスチックと海洋汚染

海の中をプラスチック粒が漂っているため回収は極めて困難なうえに、分解されないため、海洋中にどんどん増える一方です。発生量は通常のプラスチックゴミとあわせると、年間で800万トンと言われ、ジャンボジェット機5万機分の重さに匹敵します。

また、プラスチックの表面には細かな凹凸があり、有害な化学物質を吸着しやすい性質を持っています。プラスチック自体にも添加剤が使用されており、その添加剤が海洋汚染の原因にもなっています。

海洋生物への影響

海洋生物たちはマイクロプラスチックや、プラスチック製品をエサと間違えて食べてしまうことがあります。例えば、体内に入ったプラスチックが内蔵に詰まってしまうケースや、付着していた有害な化学物質などが体内に蓄積してしまうケースがあります。それによって海洋生物が死んでしまうこともあるのです。

具体的には2019年にフィリピン沿岸に打ち上げられたクジラの死骸から40kgものビニール袋が発見されました。海中でふわふわ漂うビニール袋は海洋生物のエサとなるイカ・タコ・クラゲ等によく似ています。その結果、誤って食べてしまうのです。

ビニール袋を消化できず、「満腹」だと誤認し続けたクジラは栄養を摂ることができず餓死してしまったとみられています。見つかったクジラはやせ細っていて、血を吐いた痕も見られたそう。

また、2018年にも同様のクジラの餓死がタイでニュースになりました。この時は、生きている状態で見つかったそうですが、胃がビニール袋でいっぱいで既にエサを食べることができない状態だったそうです。5枚ほどビニール袋を吐き出しましたが、5日後には衰弱死してしまったとのこと。このクジラからは7.7キロほどのビニール袋等の海洋プラスチックゴミが出てきたそうです。

他にもウミガメやイルカ、アザラシ等の死亡例も確認されていて、プラスチックゴミがいかに海洋生物にとって危険であるかが分かりますね。人間の目で確認できているだけでも年間300頭以上の被害が出ているとされていますが、海の中で死んでしまうケースもあるため、実際にプラスチックゴミが原因で亡くなってしまう動物たちは、かなり多いと考えられます。

人体への影響

化学物質に汚染された魚を食べると間接的にわたしたちの体内にも化学物質が入ってしまうことになります。2018年に欧米消化器学会はマイクロプラスチック片が私たち人間に取り込まれていることを証拠とともに発表しました。人体への影響はハッキリと解明されていませんが、がんの発生や代謝性疾患の発症を引き起こす可能性のある化学物質が検出されていたり、付着した化学物質が有害なものへと変化する可能性があったりするため、各国は対策に取り組んでいます。

嘘だといわれる理由  

マイクロプラスチックと検索すると「マイクロプラスチックによる人体への影響は嘘」といったような記事を目にします。水俣病やイタイイタイ病などの公害のように、具体的な症例がないため、嘘と書かれることもあります。ですが、有害な化学物質は体内に蓄積されてしまう研究結果も出ています。

マイクロプラスチック問題の対策

各国による対策

国名

取り組み

イタリア

マイクロプラスチックを含み、洗い流すことのできる化粧品の製造・マーケティングを禁止

フランス

使い捨てプラスチック容器を原則使用禁止

台湾

段階的にプラスチック製ストローを使用禁止し、2030年までに完全に使用禁止

イギリス

マイクロビーズの禁止、使い捨てレジ袋有料化

カナダ

2022年に特定使い捨てプラスチック禁止規制案を発表。

 

日本政府による対策

G20が2019年6月に大阪で開催したサミット(G20大阪サミット)にて「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を世界共通のビジョンとして共有しました。「大阪・ブルー・オーシャン・ビジョン」とは、2050年までに海洋プラスチックゴミによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指すものです。

日本政府はこの目標の実現のため、廃棄物管理、海洋ごみの回収およびイノベーションを推進するための、途上国における能力強化を支援していくアクションプラン発表しました。このアクションプランを簡単に解説します。

・プラスチックごみの回収・適正処理の徹底やポイ捨て・不法投棄、非意図的な海洋流出の防止

・環境中に排出されたごみの回収

・海洋生分解性プラスチックや紙等の開発やこうした素材への転換などの技術革新

・日本の技術等を活かし、途上国等の海洋プラスチックごみ問題に貢献していく

・世界的に海洋プラスチック対策を進めていくために実態把握や科学的知見を充実させる

 

また、2022年にプラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律を施行。略して「プラスチック新法」などと呼ばれており、プラスチックごみの削減とリサイクルの促進を目的としています。この新法は、プラスチックを規制するわけではなく、設計~再利用までの全てのプロセスで資源を循環させようというもの。サーキュラーエコノミー(循環経済)の考えが採用されていて、原則として下記の3Rが掲げられています。

 

・リデュース ごみを減らす

・リユース 繰り返し使う

・リサイクル ごみをエネルギー源として再利用

 

プラスで「リニューアブル(再生可能)」も目標とされています。

日本ではこのような目標を掲げていますが、わたしたちには一体何ができるのでしょうか?

身近にできる取り組み

マイクロプラスチックを削減するためには、プラスチック自体を減らすことが重要です。そのためには、プラスチック製品を購入しない、マイクロビーズが入っていないスキンケア用品を購入する、ポイ捨てをしない、海岸の清掃活動に参加する、など身近にできることはたくさんあります。

未来を生きる子どもたちのためにもできることから始めましょう。