実態の伴わないエコ「グリーンウォッシュ」って?具体事例と見分けるポイント

  • エネルギーと環境問題

2030年にSDGsを達成するため、企業にも持続可能な社会づくりのためのアクションが求められる昨今。様々な取り組みが行われていますが、中には実態の伴わない状態でエコを騙る事例があることをご存知ですか?今回はそんなグリーンウォッシュについて解説します。

グリーンウォッシュとは

グリーンウォッシュとは、実際には環境に十分配慮していない商品やブランドについて、パッケージやPRなどを通じて「エコ」「環境にやさしい」といった誤った印象を与える行為のことです。英語で「うわべを取り繕うこと」を意味するWhitewashingと、「環境にやさしい」という意味のGreenを組み合わせて作られた造語で、1980年代にアメリカの環境活動家によって唱えられました。

具体例としては「環境に配慮していること」が強みになる近年では企業・商品イメージの向上のために、虚偽の「強み」を押し出したり、あまり含まれていない天然素材がたくさん含まれているようなパッケージで売り出したりすることです。

2020年に欧州委員会はスクリーニング調査を世界中の企業サイトで横断的に行いました※。その結果「自社の取り組み・商品はグリーンである」としている企業サイトのうち42%が誇張されすぎているもしくは欺瞞的(=ほぼウソ)であることが発表されたのです。

※参考

グリーンウォッシュの問題点

消費者の正しい選択を妨げる

「環境に配慮しているか否か」というのは、今や値段や品質と同じように消費者が商品、ブランドを選ぶ基準の一つとなっています。皆さんも地産地消を意識したり、認証マークを確認したりして商品を選んだこともあるのではないでしょうか。

消費者が環境にやさしい商品を選ぶことは、企業に対して環境問題への取り組み強化を促すことにもつながっており、社会全体として環境を守るための好循環が生まれ始めているのです。

ところが、グリーンウォッシュを行う商品やブランドが生まれることで、消費者が本当にエコなものを選択することが難しくなってしまいます。また、それによって実際に環境に配慮している商品への信頼度も低くなってしまい、そもそも環境にやさしい商品を選ぼうとする消費者が減ってしまうかもしれません。

不当な資金集めが行われる可能性がある

「ESG投資」「グリーンボンド」など、環境に配慮した企業の活動にお金が集まる仕組みが増えてきました。グリーンウォッシュによって出資者に誤った印象が伝われば、そのような仕組みを通じて集まったお金が出資者の意図とは異なる用途で使われることになってしまいます。一つ目の問題点と同じように、環境関連の資金集めの仕組み自体が形骸化してしまうことにもつながります。

企業のイメージ低下につながる

「環境にやさしい」と謳っていた企業の製品が実はそうではなかった、と消費者に伝わった場合、言うまでもなくその企業のイメージは著しく損なわれることになります。グリーンウォッシュが意図的なものではなかった場合も同様ですので、環境への配慮をアピールしたい企業の方はパッケージのデザインや文言、PRの方法などに十分注意する必要があります。

過去の事例

過去にグリーンウォッシュと指摘されたものとしては、下記のようなものがあります。

トヨタ

2008年、ベルギーでハイブリッド車の広告に使用した「Zero emissions low (CO2排出量ゼロの低さ)」という表現について、実際の数値などとの関連性が明示されておらず、グリーンウォッシュであるとの指摘がありました。トヨタはこれを受けて広告を取り下げています。

マクドナルド

マクドナルドは2018年、イギリスとアイルランドで展開する店舗全てで従来のプラスチック製のストローを紙製のストローに切り替えました。当初紙製のストローは100%リサイクル可能とされていたため賞賛を集めましたが、実際には使用された紙ストローはそのまま廃棄されていたことが明らかになり、グリーンウォッシュであるとの批判を受けました。

H&M

H&Mは2019年に自然由来の綿やリサイクル可能なポリエステルなどをすべてのラインナップに使用した「H&M コンシャスコレクション」を発表しました。大々的に「サステナブルなファッション」としてPRしていましたが、素材の含有量などの具体的な情報が欠けており、消費者に対して実際以上に「サステナブル」な印象を与えているとしてノルウェーの消費者庁から指摘を受けました。

規制状況は?

グリーンウォッシュは消費者や投資家に間違った印象を与え、環境への取り組みを阻害してしまう可能性がありますが、これに対する規制状況は国によって異なるのが現状です。

環境分野への取り組みが進む欧米では、すでに規制が設けられている国も多くあります。例えばフランスでは、直接的な制裁措置を含むグリーンウォッシュ規制が導入されました。アメリカでも連邦取引委員会がグリーンウォッシュの疑いのある企業の摘発を行っています。

日本では環境省や消費者庁がガイドラインを発表していますが、強い規制はしかれておらず、欧米に比べるとまだまだ遅れている状況です。現在金融面でのグリーンウォッシュを防ぐための取り組みとして、金融庁が東京証券取引所と連携して第三者機関によるグリーンボンドの精査などを進めようとしています。

グリーンウォッシュの見分け方

私たち消費者がグリーンウォッシュに騙されないためのポイントとして、以下のようなポイントが挙げられます。

あいまいな表現やイメージ画像を鵜吞みにしない

「エコフレンドリー」「グリーン」といったあいまいな言葉や森林などのイメージ画像のみで、環境に配慮した商品、ブランドだと判断しないようにしましょう。ウェブサイトなどで発表されている実際の数値を確認してみることをおすすめします。

例えば、リサイクル素材が利用されている商品の場合「〇%のリサイクル素材を使用」といった具体的な数値が記載されている場合は、きちんとした商品であることが多いです。

少し手間はかかりますが、ラベルを隅々まで確認したり、商品サイトを確認したりするようにしましょう。

目の前の商品が作られるまでの過程と企業の取り組みを知る

商品の製造過程を大まかにでも理解することで、どのような環境負荷があり、それに対して企業がどのような対策を行っているのかを基準に自ら判断することができます。

専門用語を使いすぎている企業・商品は疑う

一般の消費者をターゲットにしているにも関わらず、難しい専門用語が多々使われている場合は注意が必要です。なぜなら、わざと理解しづらい言葉を使うことで「なんとなく環境に配慮してそう」と考える消費者を狙っている可能性があるのです。

自信を持っている商品であれば、知識が少ない人でも購入してもらえるよう分かりやすいPRを企業は行うはずです。

環境に配慮した活動をする企業≠エコな商品を売る企業

商品ではなく企業の活動のPRが強い場合も注意が必要です。

例えば、環境に配慮した活動を行ってはいるが商品自体は環境配慮がされていないといったケースも多くあるためです。環境に配慮した活動をする企業の商品=グリーン・エコな商品と思い込んでしまう人も多いため、気を付けましょう。

各企業が行っている活動については、企業サイト等で確認ができることがほとんどです。商品の詳細を確認する際にあわせて活動についても確認できると良いでしょう。

まとめ

グリーンウォッシュについて解説しました。私たち消費者の選択は企業に対して大きな影響力を持ちます。本当に環境に配慮しているものかを見分けられるようになることは正直難しいです。しかし、商品を購入する前に一度立ち止まって考えてみる習慣や、環境配慮についての正しい知識をつけることで、違和感に気が付くことができるのではないでしょうか。

「買い物は投票」という言葉もあります。知らず知らずのうちに不正な企業を支えないように違和感を感じた際は積極的に確認するようにしましょう。