オゾン層とは?概要とオゾン層破壊について

  • エネルギーと環境問題

世界には様々な環境問題が存在し、どの問題も改善のために、様々な対策が取られています。その中でも、回復傾向にあると言われるのがオゾン層の破壊問題です。今回はオゾン層の説明や破壊されている原因、それによる影響を解説します。

オゾン層について知ろう

そもそも「オゾン」って?

ギリシャ語で「OZEIN(匂う)」という意味が語源と言われているオゾンは、3つの酸素原子(O3)が結合してできる分子で、独特な臭気が特徴の無色の気体です。

オゾン分子が紫外線(UV)光線を吸収すると、酸素分子(O2)と一酸化酸素(O)に分解します。つまり、オゾンは紫外線(UV)を吸収することができるのです。

 

また、オゾンは強い酸化剤でもあり、有機物や化学物質を容易に分解することが可能です。これにより殺菌・脱臭・洗浄などの効力があり、塩素の約7倍の威力と言われています。そのため、病院やレストランなど、多くの分野で活用されています。

 

しかし、高濃度のオゾンは、視力の低下や器官への違和感など、人体に悪影響を及ぼします。高濃度のオゾンの取り扱いには注意しなければなりません。

オゾン層って?

オゾンが集まってできた層をオゾン層といいます。

このオゾン層は成層圏と呼ばれる高度10~50kmの上空に存在し、地球の周りをベールのように囲っています。成層圏以外の大気中にもありますが、約90%がこのオゾン層に存在しているそうです。一見聞くと、90%も集まっているわけですから、オゾン層はとても分厚いのではないかと思われますが、仮に地上で集めた場合3mm程度の厚さにしかならないのです。

 

そんなオゾン層ですが、実は私たち人間にとって非常に大切な役割を担っています。

どんな役割がある?

オゾン層の役割は2つあります。一つは太陽からの電磁波である紫外線を吸収してくれること。もう一つは紫外線を吸収して大気を温めてくれることです。

 

一つ目の紫外線の吸収は私たち生物にとって大変重要なことです。

紫外線の種類によっては生き物の遺伝子や免疫力に重大な悪影響を及ぼします。オゾンのベールが、地球を取り巻いていることで地球の表面に到達する紫外線量を減らし、生物に対する有害な影響を軽減することができているのです。

また、オゾンは紫外線を吸収した際に熱を発します。この熱によって大気が暖められ、成層圏が形成されることで大気の流れを作っています。

 

出典 気象庁

オゾン層の破壊、原因と影響

オゾン層は破壊されている?

地球全体でみると1980年ごろからオゾンの量は減少傾向です。

80年代~90年代前半で大きく減少が見られたあと、90年代後半以降は増加傾向がわずかに見られました。しかし、1979年と2010年を比較すると平均で2.1%の減少が観測されています。

オゾン層破壊の例としてよく挙げられるのが、南極域上空に現れたオゾンホール。

実際に穴が開いているわけはなく、オゾンを観測した際に薄くなっている箇所が穴のように見えたことによってつけられた名前です。オゾンが世界的に減少してきた頃から観測されるようになり、今でも存在する現象です。

 

では、なぜオゾン層の破壊が進んでしまったのでしょうか。

破壊の原因

1974年、アメリカの科学者ローランド教授は『クロロフルオロカーボン(CFC)をはじめとする「フロン」がオゾン層を破壊している』という論文を発表しました。その後、82年に日本の南極観測隊が世界で初めて南極上空のオゾンが極端に減少していることを観測し、続いてイギリスの観測所も同じ現象を観測したことにより、オゾン層の破壊が世界的な問題となりました。

フロンは1930年代にアメリカで開発された化学物質で、無色、無臭、不燃性で安定性があるガスです。冷却効果があり、燃えないため、当時は電化製品やスプレーなどに多く使用されていました。しかし空気中に放出されたフロンは地上や対流圏では分解されにくく、そのままの形で上空へといってしまい、化学反応を起こしオゾンを破壊してしまうのです。

 

火山噴火などでもオゾン層が破壊されることもありますが、主な原因はフロンガスとされています。

影響

オゾン層が破壊されてしまうと、生き物は大きな影響を受けてしまいます。それは紫外線による影響です。前述した通り、オゾン層は紫外線を吸収しています。そのため、地球上の生物にとって悪影響な紫外線が地上まで届かないで済んでいるのです。

 

紫外線にはいくつか種類があり、影響が大きいとされるのが紫外線B波(UV-B)や紫外線C波(UV-C)です。オゾン層の破壊が進行すると、今まで地上に届かなかった紫外線までもが降り注いでくることになります。この紫外線量の増加は、生物に対する有害な影響を引き起こします。

紫外線B波は、非常に強く細胞内のDNAと傷つけると言われています。日焼けを始めとする人間の皮膚や眼に対して有害な影響を及ぼし、皮膚がんや白内障の原因になることが知られています。また、植物や海洋生物にも影響を及ぼし、細胞内のDNAの損傷、幼生の発育不良などを引き起こすことがあります。

このように紫外線は人間だけではなく、多くの地球の生物にとって有害です。そのため、オゾン層保護に向けた取り組みが継続的に行われています。

 

具体的にはどのような対策が取られているのでしょうか。

対策

オゾン層を保護するため1985年3月に国連環境計画(UNEP)が中心となり「オゾン層の保護のためのウィーン条約」が定められました。

そして1987年ウィーン条約に基づき「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」通称「モントリオール議定書」が採択されました。この議定書はオゾン層破壊物質の具体的な規制内容を定めたものです。この議定書に世界中の国々が調印し、フロンの生産や使用を段階的に減少させることを約束しました。

採択後も何度も見直され、オゾン層破壊対策の具体的な指標として遵守されてきたおかげでフロンの使用が世界中で大幅に減少し、オゾン層の回復が進んでいるとされています。

オゾン層が回復するには

オゾン層が回復するには、オゾン層を破壊するフロンガスなどの物質を使用しない事が大切です。実際、モントリオール議定書で規制がされて以降、フロンガスなどは規制や環境に優しいガスの開発などが進んでいます。また、23年、1月9日に出された国連の最新の報告書では、今後数十年でオゾン層は完全に回復する見通しとのことです。

 

モントリオール議定書が採択された89年以降で問題となる物質は99%も削減に成功。引き続き対策が続いた場合、ほとんどの地域で2040年にはオゾン層が回復するそうです。

また、特にオゾン層の破壊が多い北極や南極でも、66年には1980年のレベルまで回復が見込まれています。

出典 CNNニュース

 

このようにオゾン層は改善傾向にありますが、世界にはまだ改善していない環境問題が多くあります。これを機会に他の環境問題も調べ、環境に対する取り組みを考えてみましょう。