シェアリングエコノミーはなぜ注目されている?概要とサービス事例をご紹介!

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近年日本でも話題の「シェアリングエコノミー」。シェアリングエコノミーとは一般の消費者が所有するモノ、場所、スキルといった有形・無形の資産を、インターネットを介して必要とする人に提供・共有する経済の動き、またはそれを仲介するサービスです。この記事では、シェアリングエコノミー普及の背景について、その概要とサービス事例を交えて解説します。

 

シェアリングエコノミーとは

シェアリングエコノミーとは、主に一般の消費者が所有するモノ、場所、スキルといった有形・無形の資産を、インターネットを介して必要とする人に提供・共有する新しい経済の動き、またはそれを仲介するサービスのことです。2008年に米国で誕生した民宿サービス「Airbnb(エアビーアンドビー)」を皮切りに、多くの国で、様々な資産の賃貸・売買を扱うサービスが生まれています。2030年度には市場規模14兆円を超えるという予測があるほどの成長市場です。

 

これまで一般的だったビジネスモデルは、企業から消費者へサービスを提供するBtoC型や、企業から企業へサービスを提供するBtoB型です。

しかし、シェアリングエコノミーの特徴は、消費者同士が取引を行うCtoCのビジネスモデルがほとんどであること。シェアリングエコノミーに参入している企業サービスは消費者に直接サービス・商品を提供するのではなく、消費者同士を繋ぐプラットフォームを提供します。

 

シェアリングエコノミーと似たビジネスモデルとして、サブスクリプションサービスがあります。略して“サブスク”と呼ばれ、音楽アプリや動画配信アプリで既に一般的になっています。消費者が企業に対し、決められた期間に定額の利用料金を支払うことで、サービスを利用できるというシステムです。

消費者がモノを所有しないという点で類似していますが、シェアリングエコノミーは、必要な時に、必要な分だけ利用して、都度料金を支払うという形態になっている点が異なります。

 

5つのサービス分野

現在のシェアリングエコノミーサービスは、扱う資産の種類によって大きく5つの分野に分類されます。

・空間(部屋、駐車場の貸し出しなど)

・移動(自動車、自転車のシェアなど)

・モノ(フリーマーケット、洋服レンタルなど)

・スキル(家事、育児の代行サービスなど)

・お金(クラウドファンディングなど)

 

成長を続けるシェアリングエコノミー市場

シェアリングエコノミーは、テクノロジーの進化に伴い、誕生した新しい経済モデルです。そのため、従来の経済モデルよりも社会の変化に柔軟に対応できるのが大きな特徴です。

これまでシリコンバレーを起点に成長してきたシェアリングエコノミー市場ですが、近年は日本国内でも大きな話題となり、様々なサービスが誕生しています。その結果、2015年度時点で398億円であった国内市場規模は2021年度は2兆4,198億円となり、さらに2030年度には14兆円を超えるという予測もあります(情報通信総合研究所 シェアリングエコノミー関連調査2021年度調査結果より)。

 

日本で特に普及しているのがスキルのシェア。移動手段や空間を提供するには、自家用車や不動産などを所有していなければなりませんが、スキルの場合は、モノを所有する必要がありません。そのため参加への壁が比較的低く、企業側としてもプラットフォーマーとして参入しやすいためサービス普及が加速しています。

 

感染症の拡大などで、新しいニーズが生まれた際も、シェアリングエコノミーは成長を遂げています。

たとえば、メインで配車サービス「Uber」を展開していたウーバー・テクノロジーズは、リモートワークが急増したことをきっかけに、フードデリバリーサービス「Uber Eats」を急成長させました。食事を届けてほしい人と、宅配を代行するドライバーをつなぐことで、大きなビジネスとなりました。

このように社会が大きく変化した際に、新たなビジネスモデルを確立し、業績を伸ばすチャンスをつかみやすいのもシェアリングエコノミーの特徴のひとつです。

 

市場拡大の背景

シェアリングエコノミーがここまで注目されている背景にはどのような要因があるのでしょうか。

ここでは3つの観点から解説します。

 

消費者がモノ・サービスを扱う主体者となれる場

シェアリングエコノミーの大きな特徴の一つが、消費者同士の取引であるCtoCのビジネスモデルが多いということです。企業が消費者同士をつなぐプラットフォームを用意し、消費者はそれを利用して取引を行います。そのため、消費者自身がモノ、サービスの提供者にも利用者にもなることができるのです。

シェアリングエコノミーを活用することで消費者に発生するメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。

 

<提供者として>

・自分の資産を有効活用できる

空きスペースになっていた駐車場や着なくなった洋服、さらには家事能力等のスキルまで、有形・無形問わず自分の資産を活用することができます。

 

・簡単にビジネスを成立させることができる

企業が用意したプラットフォームを利用するため、自分が提供可能な資産の情報を発信しやすく、また取引に必要な支払い等の操作も簡単に行えます。

 

<利用者として>

・安価にモノ、サービスを購入、利用できる

仲介料がかからない分、企業からモノ、サービスを購入、利用する場合に比べて価格が安いことが多いです。

 

・選択肢が広がる

自動車や洋服などの個人所有がシェアに変わることにより、商品を購入、所有する際に必要な料金やスペースといったハードルが下がり、幅広い選択が可能となります。

インターネットの普及

今や誰もがスマートフォンやPCを利用しています。そのため、自分が所有するモノ・空間・スキルに関する情報を公開し、ユーザーへの共有が簡単にできるようになりました。さらに、オンライン決済が普及したことで、安全に簡単に決済ができるようになったため、シェアリングエコノミーのようなビジネスモデルが実現可能になりました。また、SNSを始めとするソーシャルメディアの普及により、インターネット上で他人とやり取りすることに抵抗感が薄くなったことも普及の後押しになっていると考えられます。

 

持続可能な社会への貢献

シェアリングエコノミーが注目されるもう一つの要因として、持続可能な社会との親和性が高いことが挙げられます。近年大量生産・大量消費の考え方が見直される中で、新たに生産・購入するのではなく、現在活用しきれていないモノや空間を有効活用できるシェアリングエコノミーは、社会のニーズに即したサービスであると言えます。また、前述のとおりモノ、サービスの提供者となる、また利用者となるハードルが下がるため、これまでより多くの人が自分のスキルを活用して働けるようになったり、移動手段を確保できるようになったりと、SDGs(持続可能な開発目標)の項目達成に貢献することが期待できます。

SDGsについて詳しく知りたい方はこちら↓

https://www.smart-tech.co.jp/column/environment-issues/sdgs/

 

具体的なサービス事例

ここからはシェアリングエコノミーのサービス事例をいくつかご紹介します。

 

・空間のシェア:SPACEMARKET

パーティー、会議、撮影など用途に合わせたスペースの貸し借りができるサービスです。掲載されているスペースの中には古民家や映画館、廃墟ビルなどユニークなものも多くあります。

 

・移動のシェア:notteco

車で移動したい場合に同じ目的地のドライバーとマッチングし、相乗りできるサービスです。ガソリン代、高速代は割り勘になるため、利用者とドライバーの双方が割安で移動できます。

 

・モノのシェア:LAXUS

定額制でHERMES、LOUIS VUITTONをはじめとした57ブランドのバックを自由にレンタルできるサービスです。自分のブランドバックを預けて収入を得ることもできます。

 

・スキルのシェア:タスカジ

掃除洗濯、料理、整理収納、チャイルドケアなど、幅広い家事を経験豊富なハウスキーバーに直接依頼できるサービスです。家事代行業者を介さずにやり取りができるため、細かい要望を伝えることができます。また、主婦・主夫歴の長い方がスキルを活かして働ける場でもあります。

 

・お金のシェア:CAMPFIRE

アイデアを持つ人がそれに共感した人からの支援を得るという形で資金調達に挑戦できる、国内最大のクラウドファンディングサービスです。2011年にサービスが開始されてから、立ち上げられたプロジェクトは5.5万件、支援された金額は総額480億円に上ります。

 

今後の課題

今後も成長が見込まれるシェアリングエコノミー市場ですが、新しいサービスならではの課題も多く残されています。例えば、保険・補償制度の整備が不十分なため、事故やトラブル発生時の対応が適切に行われない可能性があります。このような状況を踏まえ、最近ではシェアリングエコノミーサービスに特化した保険も登場しています。保険と同様、法律の整備にも課題が残っており、個人がサービス提供者となるシェアリングエコノミーに既存の事業者向けの法律がどこまで適応されるのか等、グレーゾーンも多いのが現状です。一般社団法人シェアリングエコノミー協会などから、時代に沿った法律を整えるように声があがっていて、今後の動向に注目が集まっています。また、基本的には一般の消費者が個人間で取引を行うことになるため、安全性やクオリティの担保も解決すべき課題の一つとなっています。

 

また、個人の所有物をシェアすることへネガティブなイメージを抱く人もまだまだ多いのが現状。総務省が2016年に発表した民泊サービスの認知度・利用意向に関する調査によると、20代〜60代の全ての層で、利用意向率が40%以下となり、全ての年代層で利用意向率が70%以上の韓国・中国・インドなどと比べると、対照的な結果になっています。

 

しかし、シェアリングエコノミーの課題についてはすでに対策が取られ始めており、これから更なる成長が見込まれます。サービスの利用によって持続可能な社会の形成にも貢献できますので、ぜひ自分に合ったサービスを探してみてください。