太陽光発電のセカンダリー市場が注目されるのはなぜ?案件売買のポイントも解説

  • 太陽光発電の基礎知識

近年盛り上がりを見せる太陽光発電のセカンダリー市場。この記事ではセカンダリー市場盛況の背景について、需要と供給の両面から解説します。また、セカンダリー案件を売買する際のポイントも詳しくお伝えします。

 

太陽光発電のセカンダリー市場とは?

太陽光発電のセカンダリー市場とは、すでに稼働している太陽光発電所を中古で売買する市場のことです。これまで新規開設の多かった太陽光発電所ですが、近年はセカンダリー市場で取引される案件が増加しています。矢野経済研究所が行った調査によると、2017年度に発電出力ベースで300MWだった市場規模は、2021年度には1,200MWを超えると予測されています。

なぜ今セカンダリー市場が注目されているのでしょうか。ここからは市場拡大の背景を需要側、供給側の両面から解説します。

 

市場拡大の背景:需要側

固定価格買取制度(FIT)の変化

固定価格買取制度(FIT)は再生可能エネルギーを普及させる目的で2012年に導入されました。国からの事業認定を受けることにより、再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社に一定期間、通常の売電価格よりも高値の固定価格で買い取ってもらうことができます。この制度によって安定した収益が保証されたため、投資目的で太陽光発電所を新設する動きが広がりました。しかし定められた固定買取価格は年々安くなっており、新たに事業認定を受けた太陽光発電所で得られる利益は徐々に少なくなっています。そこで、過去の買取価格が高かった時期に事業認定を受けた中古の太陽光発電所を買い取りたいと考える投資家が増えているのです。

また、元来投資用として人気の高かった低圧区分(50kW未満)の太陽光発電所が2020年度の制度変更により全量売電の対象外となったことも、すでに事業認定を受けた発電所の需要を高める大きな要因となっています。

 

事業会社の再エネへの意識の高まり

これまでセカンダリー市場における買い手はファンド・金融系投資家が中心でしたが、SDGsやESG投資にまつわる世界的な流れを背景に、再生可能エネルギーを確保したい事業会社も買い手として参入するようになりました。自社で消費する電力を再生可能エネルギーに転換する取り組みは多くの事業会社で行われており、FIT終了後も需要は伸びていく見込みです。

 

コロナ禍における低リスク資産との認識

新型コロナウイルスの影響を予測しきれない中、投資家からすれば既存の金融商品や投資案件だけでは不安材料が多いというのが現状です。災害リスク等はあるものの、FITによる安定した売電収入とコロナ禍での電力需要増加を背景に、太陽光発電所を低リスク資産とみなして新たな投資先に選ぶ投資家が増えています。

 

盛り上がりの背景:供給側

減価償却目的で購入した投資家の売却

事業用の太陽光発電所には減価償却が適用されるため、減価償却費の計上を目的として太陽光発電所を購入する場合があります。目的達成後には売却し現金化することが多く、セカンダリー市場で売りに出される発電所が増加する要因となっています。

 

コロナ禍での厳しい事業環境

太陽光発電所を所有する民間企業の中には、新型コロナウイルスの影響を受け、経営資源の集中や資金の確保を図るために売却を検討する企業もあります。現在の状況を踏まえると、今後もこのようなトレンドは続くと考えられます。

 

セカンダリー案件購入のメリット・デメリット

ここからは、新規案件と比較してセカンダリー案件を購入するメリット・デメリットをご説明します。購入案件を検討する際の参考にもなると思いますので、ぜひチェックしてみてください。

 

メリット①発電量の実績がある

新規で太陽光発電所を建設する場合、発電量をシュミレーションして収益を予想することになりますが、その精度は業者によってばらつきがあり、実際のところどの程度発電できるのかは稼働してみないとわからないというのが実情です。その点セカンダリー市場で取引される太陽光発電所は既に実績があるため、実際の数値をもとに利回りなどを計算することができます。

 

メリット②すぐに売電を開始できる

通常、太陽光発電所を新設する際には設置や申請などに数か月の時間を要します。しかし中古で購入する場合にはすぐに発電・売電を開始することができ、タイムラグがありません。

 

メリット③融資を受けやすい

新規、中古問わず、太陽光発電所は決して安い買い物ではありません。購入にあたって金融機関等からの融資を受ける場合、稼働実績のある中古の発電所であれば収益が予想できるため融資のハードルが下がる傾向があります。

 

デメリット①FITの残存年数が少ない

FITの固定価格での買取はあくまでも期限付きのものです。事業認定を受けた時期が早いほど買取価格は高くなりますが、その分FITを利用した売電が可能な残存年数は短くなってしまいます。FITでの買取が終了すると売電価格は大きく下がってしまいますので、購入する際には買取価格と残存年数のバランスを見ながら比較検討してみてください。

 

デメリット②立地条件やメンテナンス状態の確認が必須

保守・管理の手間から売りに出されることも多い太陽光発電所。セカンダリー市場で取引されている発電所の中には、地盤や立地に問題があったり、経年劣化で発電効率が低下したりしているものもあります。自然環境の影響を受けやすいことをふまえ、稼働実績などを確認しながら慎重に案件を選ぶ必要があります。

 

これから売却を考えている方へ

現在太陽光発電所を所有している方の中には、将来的に売却を考えている方もいらっしゃると思います。高く買い取ってもらうためにも、査定の際のチェックポイントを確認しておきましょう。

 

  • 売電実績とFITの残存年数

売却価格を決定する最も重要な要素といっても過言ではありません。書類などで実績を明確にしておくことにより評価が高くなります。

 

  • 立地環境

十分に発電できる環境か、災害リスクはどうかといった観点で評価されます。

 

  • 設備の部材

信頼性の高いメーカーの部材を使用している発電所は万一故障があった場合にも対応がしやすいため、評価が高くなる傾向にあります。

 

  • メンテナンス状態

周辺の雑草が伸びていたり、パネルが雨や風の影響で汚れていたりすると、それだけで発電効率が下がってしまいます。実績のある施工業者に依頼し、定期的にメンテナンスを行いましょう。

 

セカンダリー市場の盛り上がりに合わせて中古の太陽光発電所を扱う企業も増えてきていますので、そういった企業に査定を依頼してみるのも良いかもしれません。

 

 

太陽光発電のセカンダリー市場は今後ますます拡大していくとみられます。太陽光発電所の購入を考えている方は、中古も視野に検討してみてはいかがでしょうか。