全量売電と何が違う? 余剰売電と買取の仕組み

  • 太陽光発電の基礎知識

太陽光発電の設置を検討している人にとって大きな関心があるのが、余った電力を売ることができる「余剰売電」ではないでしょうか。余剰売電とはどのようなものなのか、その概要と仕組みについて解説します。

余剰売電とは

余剰売電とは、太陽光発電システムで得た電力を使用し、余った電力を電力会社へ売ることを言います。

もともと余剰売電は、2009年11月1日から2012年7月1日まで実施されていた「余剰電力買取制度」において、太陽光発電からの余剰電力を一定価格で買い取ることを電気事業者に義務付けることから始まったものです。

現在、同制度は2012年7月1日にスタートした「固定価格買取制度(改正FIT法)」に移行しています。しかし、太陽光発電システムの出力が10kW未満の場合、以前と同様に余剰電力を買い取る仕組みが適用されています。

余剰売電では、太陽光発電で発電した電気はまず家庭で消費し、余りが出たときにだけ電力会社に売ることができます。つまり、節電をすればするほど余剰電力は増え、各家庭はその分の収入を得ることができます。このため余剰売電は、家庭の節電や省エネを促すための仕組みであると言えます。

全量売電と何が違う? 余剰売電の仕組み

現在の固定価格買取制度(改正FIT法)では、設置している太陽光発電システムの出力が10kW未満の場合には、余剰売電で電力を売る方法のみしか選ぶことができません。これはもともと余剰売電が住宅に設置する太陽光発電システムを想定したものだからです。

一方、10kW以上の出力を確保できる場合は、余剰売電に加えて全量売電という仕組みを選択できるようになります。こちらは工場などに太陽光発電システムを設置することを想定した仕組みです。

全量売電では、余剰電力とは関係なく、太陽光発電で得たすべての電力を売ることができます。代わりに、自分で消費する電気については通常通り電力会社から買うことになります。売電価格は年度ごとに見直されますが、基本的に余剰売電の場合よりも全量売電の方が高くなっており、電力会社から買電する分の支出を差し引いても全量売電の方が収入が多くなります。

通常、日本の標準的な住宅の屋根に取り付けられるソーラーパネルの出力は4~5kWと言われています。したがってほとんどの家庭では、電力を売る場合は余剰売電で売ることになります。

ただし、個人の住宅であっても屋根面積が広い場合やカーポートの屋根にもソーラーパネルを設置する場合、庭にソーラーパネルを設置する場合など、総出力を10kW以上にする方法もないわけではありません。10kW以上であれば、個人宅であっても全量売電を選ぶことが可能です。

余剰売電で得られる売電収入

余剰売電ではどの程度の売電収入が得られるのでしょうか。
経済産業省が定めた住宅用(認定容量10kW未満)の売電価格は、24円/kWhまたは26円/kWhとなっています。

24円と26円の違いは、出力制御対応機器の設置義務の有無によって決まります。出力制御対応機器とは電力会社が遠隔操作によって発電量を抑制する装置です。出力制御対応機器の設置が義務付けられているのは、北海道電力、東北電力、北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力の管轄エリアです。

余剰売電の売電価格は10年間固定です。したがって2019年に太陽光発電を導入した場合に、この価格が適用されます。

なお、余剰電力の売電収入は通常、「雑所得」に該当し、所得税等の課税対象となります。ただし、所得の計算をする場合は売電収入から必要経費を差し引くことができます。太陽光発電の必要経費は設備の減価償却費として計上するのが一般的で、家庭の場合、余剰電力の売電収入によって税金が発生するケースはほとんどありません。

また、給与所得者(年末調整が済んでいる方)が給与所得以外に、売電収入を含む合計20万円を超える所得を得た場合には、確定申告が必要となります。

余剰電力による売電収入を増やす方法

余剰売電で収入を増やすには、いかに効率的に節電努力をするかがポイントとなってきます。家庭で消費する電力をなるべく少なくし、発電量はなるべく増やして、余剰電力を少しでも多く作り出すことが基本となります。

特に、太陽光発電による電力を得られない夜間などの電力消費量を減らす努力をすると収入アップに大きく影響します。夜間に使用することの多い冷蔵庫や照明器具、エアコンなどの家電製品は、順次省エネタイプのものに変えていくことで、節電効果が見込めるでしょう。

また、効率性を追求するならエネファームなどの創エネ機器と呼ばれる機器や家庭用蓄電池を導入し、太陽光発電システムと組み合わせる方法が考えられます。ただし、これらは新たな初期費用を必要とするため、投資した分を取り戻すには長期間かかることを覚悟しなければなりません。他には、経済産業省が定める固定価格よりも高い単価で電力を買い取ってくれる新電力事業者を探すという方法もあります。

売電価格は10年間固定されます。しかし余剰売電の売電価格は年々下落しているため、太陽光発電を設置するのであればより早く設置した方がお得ということになります。節電を心がければ、その分、余剰売電によって収入を得ることができる太陽光発電の設置を検討してみてはいかがでしょうか。