太陽光発電と創エネ機器を組み合わせた「ダブル発電」とは?

  • 太陽光発電の基礎知識

太陽光発電の設置を検討している人なら、太陽光発電に創エネ機器と呼ばれる装置を組み合わせる「ダブル発電」という選択肢があることをご存知かもしれません。しかし、ダブル発電には太陽光発電のみ設置した場合と比べて、メリットもあればデメリットも存在します。ダブル発電を導入する際に知っておくべきポイントについて解説していきます。

ダブル発電とは

ダブル発電とは、太陽光発電に加えて創エネ機器を導入し、両者を組み合わせて発電するシステムのことです。再生可能エネルギーの普及を目指して作られた固定価格買取制度(FIT制度)では、認定容量10kW未満の場合に「ダブル発電」を行うと通常とは異なる売電価格となることが定められています。

ダブル発電に該当する創エネ機器には以下の4種類があります。

エネファーム

都市ガスやLPガスから水素を取り出し、空気中の酸素と反応させて電気を作り出す発電装置です。発電時の排熱を給湯にも利用できます。なお、電気と熱の両方を作り出すシステムはコージェネレーションシステム(コージェネ)と呼ばれます。

エコウィル

都市ガスやLPガスを燃料とするガスエンジンで発電、その際に発生する排熱を給湯に利用します。エコウィルの方がエネファームよりも以前からある製品ですが、エネファームと同じコージェネレーションシステムです。

蓄電池

蓄電池は電気を蓄える装置で、家庭用のものが各社から発売されています。発電はできませんが、太陽光発電をしている昼間の時間帯に蓄電池に蓄えた電気を放電した場合はダブル発電に該当します。夜間にのみ放電する蓄電池はダブル発電には該当しません。

電気自動車

電気自動車も蓄電池と同じように電気を蓄えるために使えるため、創エネ機器に含まれます。ただ、こちらもダブル発電に該当する場合と該当しない場合があり、最近はダブル発電に該当しない仕様を選べる車種が登場しています。

売電価格が変わる? ダブル発電の「押し上げ効果」とは

創エネ機器を使って家庭内の電力をまかなうと太陽光発電で作られた電力が余るため、その分、多くの電力を売ることができます。このようにダブル発電によって売電量が増えることを、「押し上げ効果」と呼びます。

しかし、もともと固定価格買取制度は再生可能エネルギーの普及を目指し、太陽光発電で得た電気を買い取るために定められた制度です。エネファームなどで創られた電力や、押し上げ効果によって増やした電力を太陽光発電で得られた電力と同じ価格で売ることができると公平さに欠けることになります。その一方で、創エネ機器の家庭への導入が再生可能エネルギーの普及につながるという側面も無視できません。

そこで議論された結果、ダブル発電の場合は太陽光発電のみで得られた電力と比べて減額した単価で買い取るという方針が示されました。押し上げ効果で得られる電力は通常の20%程度という試算に基づき、ダブル発電では当初、20%分を安い価格で買い取るよう設定されていました。

ただし、直近の売電価格に関しては事情が変わってきています。2018年には通常の場合とダブル発電の場合との価格差は1円になり、2019年にはついに同額となりました。これまでと違って両者の価格差がなくなったのです。売電価格は年度ごとに見直されますが、今後はこの傾向が続くものとも考えられます。

ダブル発電のメリット

家庭でダブル発電を行うメリットを見てみましょう。主に次の2点が挙げられます。

電気代の削減ができる

太陽光発電のみの場合と比べて発電量が多くなるため、電気代を削減できます。ただし、エネファームやエコウィルではガスを使用するため、その分ガス代は高くなります。光熱費全体として考えると、条件にもよりますが、損得が相殺される可能性があります。

夜間や悪天候でも発電できる

太陽光発電では天気の良い日中しか発電することができません。エネファームやエコウィルには夜間や悪天候でも発電できるという強みがあり、その分売電量も増やすことができます。さらにエネファームとエコウィルには停電時でも発電できる自立運転機能が搭載されている機種があるため、災害時などに心強いシステムと言えます。

ダブル発電のデメリット

一方で、ダブル発電にはデメリットもあります。主に次の2点です。

初期費用が高くなる

太陽光発電システムに加えてエネファームや蓄電池などの創エネ機器も必要となるため、設備導入のための初期費用が高額になります。最も高額なのはエネファームで、補助金を適用したとしても約150万円かかります。初期費用分を回収するために必要な期間もそれだけ長くなります。

売電価格が下がる可能性がある

前述したように、ダブル発電ではこれまで太陽光発電のみの場合と比べて売電価格が安く設定されていました。1kWあたりおよそ6~8円引き下げられていたため、年間の売電収入も数千~数万円単位で差がついていました。

しかし、2019年度にはダブル発電も通常の場合と同じ売電価格になっているため、売電価格に関してはシングル発電との差がない状況に変わってきています。

経済的メリットの観点から見ると、ダブル発電の方がお得とは一概に言えません。太陽光発電と給湯設備を併用する方法を検討するなら、オール電化にするという選択肢も考えられます。ただ、ダブル発電にはCO2削減など環境に優しいというメリットもあるので、そのことも含めて総合的に判断することをおすすめします。自分の志向や生活スタイルに合った方法を検討してみてください。