アート×自然×テクノロジーが創るサステナブルな未来
自然、技術、アート、それぞれが異なる特質を備えながら、これらを調和させることで、サステナブルな未来に向けた新たな試みが世界各地で行われています。
本記事では、エネルギー生産技術、アートの創造力、そして自然の美しさが共存することに焦点を当て、私たちの環境に及ぼす影響について新たな視点を提供します。
風力エネルギーの美：アートと技術の融合
風力発電施設は、クリーンで環境にやさしいエネルギー供給源として知られていますが、風力タービンは、景観の一部としてはあまり美しいものとして扱われていませんでした。
ここでは、風力タービンにアートの要素を取り入れることで、機能性の他にもその価値が認識されつつある例に焦点を当て、風力タービンが景観美を提供する事例を紹介します。
オランダのデザイナー、ダーン・ローズガールデは、美しい風力エネルギーをテーマにした「WINDLICHT」プロジェクトで、風車の回転する羽根を光の線で繋げたアート作品を披露しました。この作品では、風車の羽根にLEDライトを取り入れ、風力発電の美しさを引き立て、アート的な要素を加えました。「WINDLICHT」プロジェクトは、D&AD Awardsで高い評価を受け、サステナブルなデザインの一例として、公共スペースで注目を浴びました。
太陽光発電の新たな形：建築との調和
太陽光発電装置は、エネルギーの未来を考える上で不可欠な役割を果たしますが、その中には建築物との調和によって新たな景観が生まれる美的な要素も存在しています。
ここでは、太陽光発電装置と建築物の統合に焦点を当て、それに関連する事例をご紹介いたします。
AGC株式会社の鹿島工場は、壁面に垂直型の太陽光発電装置を統合し、エネルギーの生産機能を果たす一方で、建築物としての美的価値を高め、太陽光発電装置と建物が調和する美しいアートとしての役割も果たしています。また、この工場では建物の屋根にも太陽光電池が設置され、ZEB（NET ZERO ENERGY BUILDING）の実現に成功し、クリーンエネルギー供給と美的価値の向上が同時に実現されました。
出典：AGC株式会社
プラント・アートの力：エネルギーとアートの調和
プラント・アートは、建物や公共スペースに緑を取り入れ、空気浄化、断熱、そして美しい景観を提供する、エネルギーとアートの見事な融合の一例です。
ここでは、プラント・アートがサステナブルな都市開発へどのように貢献しているかに焦点を当て、緑の壁、屋上庭園、都市農園など、具体的なプラント・アートの成功事例を紹介します。
イタリアのミラノ近郊に位置するショッピングセンターは、壁一面に広がる世界最大の「垂直庭園」としてギネス世界記録に認定されました。この壮大な垂直庭園は、フィオルダリーゾ（Fiordaliso）という商業施設の外壁に、イタリアの建築家フランチェスコ・ボラーニ氏によってデザインされました。総面積は1,263平方メートルにおよび、その壁には4万4,000本もの植物が植えられています。この建物は、環境への配慮と省エネルギーを結びつけた、サステナブルな建築の優れた例として高い評価を受けており、垂直庭園は2010年に完成したものの、2023年9月17日にギネスに認定されました。
出典：BBCニュース
公共アート：エネルギーへの意識
公共アートは、日常生活にアートを取り入れ、効果的なメッセージ伝達手段として注目をされています。例えば、エネルギーの使用に関する情報を視覚的に表現し、サステナブルな行動を奨励するなどの公共アートプロジェクトが増加傾向にあります。
ここでは、エネルギーに対する意識を高めるために公共アートがどのように活用されているかに焦点を当て、関連する事例を紹介します。
2021年、チリのアタカマ砂漠に位置する南米初の太陽熱発電所「セロ・ドミナドール」が建設されました。この発電所は、2050年までにカーボンニュートラルを実現する目標に貢献することが期待され、700ヘクタールの敷地に250メートルのタワーと1万600枚の鏡から成り、最大110メガワットの電力を生み出すことができます。隣接する太陽光発電所と連携し、セロ・ドミナドールは合計で210メガワットの再生可能エネルギーを供給し、最大17.5時間のエネルギー貯蔵が可能で、日光が当たらない時でも24時間稼働が可能です。この発電所により、年間60万トン以上のCO2排出が削減され、30万台の自動車に相当する排出を抑制する効果が期待されています。
出典：BBCニュース
※カーボンニュートラルについては、こちらもご参照ください。
～持続可能な未来への鍵～ カーボンクレジットとは？
リサイクルアート：廃棄物が創る新たな価値
廃棄物を芸術的なアプローチで変容させるリサイクルアートは、エネルギーや環境への意識を高めるために効果的な方法です。
ここでは、廃棄物から新たな価値を生み出し、それがサステナブルな未来へどのように貢献しているかに焦点を当て、具体的な事例を紹介します。
新潟県出身の「廃材再生師」である加治聖哉さんは、廃材を再利用し、新しい価値を創造する活動を展開しています。彼の作品は、生き物をモチーフにし、実物大で制作されています。2022年には、長岡市の杜々の森名水公園とのコラボレーションプロジェクトで、「廃材水族館」を発表し、廃材から生物の特徴を見出し、迫力ある作品が展示されました。加治聖哉さんの活動は、廃材再生を通じて環境への配慮を促進し、サステナブルな未来への貢献に寄与しています。
出典：にいがた観光ナビ
まとめ
自然、技術、アートの調和によって、サステナブルな未来に向けた可能性が広がっています。伝統的な枠にとらわれない多面的なアプローチは、環境への意識を高め、エネルギー資源の制約について新たな視点を提供します。
自然、技術、アートの調和が、私たちの生活と環境に新たな展望をもたらし、これらの要素がサステナビリティの鍵となっていることを示しています。
