取り返しがつかなくなる前に。世界遺産と環境問題

  • エネルギーと環境問題

地球には多くの世界遺産があり、どれを取っても素晴らしいものです。日本にも数多くの世界遺産があります。しかし、様々な問題により価値が失われてしまいそうな世界遺産が多くあることをご存じでしょうか。それらを未来に遺していくために、まずは正しい知識をつけることが大切です。

このコラムでは世界遺産と環境問題について簡単に説明します。

世界遺産とは

世界遺産は国際連合の教育科学文化専門機関(UNESCO)にある世界遺産委員会で毎年審議されています。UNESCOは世界各国から来る推薦書から、顕著な普遍的価値を持つ建造物や遺跡、景観、自然という基準を満たすものを認定しています。

 

世界遺産には三つの種類があります。

①文化遺産

記念物、建造物群、遺跡、文化的景観など

例:タージ・マハル(インド)、ケルン大聖堂(ドイツ)など

②自然遺産

地形、地質、生態系、絶滅の恐れのある動植物の生息・生育地など

例:キリマンジャロ国立公園(タンザニア)、イエローストーン国立公園(アメリカ)など

③複合遺産

①、②の両方の価値を兼ね備えているもの

例:メテオラ(ギリシア)、ティカル国立公園(グアテマラ)など

 

「顕著な普遍的価値」とは、どこに住んでいても、いつの時代でも、どのような信仰をもつ人でも、同じように素晴らしいと感じる価値のことです。そうした価値をもつ世界遺産は素晴らしい財産といえます。わたしたち人間にはその財産を守る使命があります。

日本の世界遺産

日本では、2023年2月現在登録されている世界遺産は25件あり、「富士山」や「屋久島」が特に有名です。また、2021年には「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」「北海道・北東北の縄文遺跡群」が同時に2件登録され、これは世界的にも非常に珍しいことです。

世界遺産は全国に点在しているため、一度は訪れたことのある方も多いのではないでしょうか?

危機遺産と環境問題

みなさんは「危機遺産」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?

さまざまな原因によって、世界遺産としての意味を揺るがす、もしくはその恐れがある遺産のことを「危機遺産」と呼んでいます。現在1154件ある世界遺産のうち52件が危機遺産とされています。日本でも「富士山」のゴミ問題が記憶に新しいところです。

この危機遺産の中には、環境問題が原因となっているものもあるのです。

環境問題が関わる原因

森林破壊

森林破壊とは人間たちの開発や資源調達のために樹木を伐採してしまい、森林面積が減少してしまうことです。森林が減少することにより、生物の生態系に影響を与えたり地球温暖化が進んでしまったり、様々な悪影響を及ぼします。


例えば、マダガスカルの東部に広がるアツィナナナの雨林は絶滅危惧種が生息していることや生物の多様性が評価されて2007年に世界遺産として登録されました。

ですが、2009年に起こった政変によって自然保護政策が頓挫してしまったため、絶滅危惧種の密猟や違法な森林伐採がおこなわれています。そのため、評価されていた美しい環境が破壊されてしまい、危機遺産として登録されてしまいました。

絶滅危惧

様々な要因によって生息数が減り、絶滅してしまうかもしれない生物のこと絶滅危惧種といいます。


美しい自然の中で特有の生態系が育まれていることが評価され、2005年に世界遺産として登録されたカリフォルニア湾の島々と自然保護区群。

その地域の固有種であるコガシラネズミイルカは混獲や農薬による海洋汚染により数を減らしてしまい、絶滅危惧種として評価されてしまいました。そのため、カリフォルニア湾の島々と自然保護区群は危機遺産として登録されたのです。

生態系破壊

バランスを保ちながら共存していた生物が人間の手によって破壊されてしまうことを生態系破壊といいます。生態系が破壊されてしまうと食物連鎖が崩れ、共存の危機に陥ることです。


アメリカ合衆国フロリダ州にあるエバーグレーズ国立公園は、アメリカ最大の湿地帯が広がっており、絶滅の恐れがあるフロリダピューマを含む様々な生物が生態系を作り出しています。その貴重さから1979年に世界遺産として登録されましたが、都市化による水量の減少や水質汚染などから水生生物の生態系が悪化しており、危機遺産として登録されています。

まとめ

今回紹介した、環境問題によって危機に瀕している世界遺産はほんの一部です。未来に遺していくべき価値のあるものを自分たちの手で破壊しているのが現状。

世界遺産といった素晴らしい財産を守っていくには、ひとりひとりの意識が大切になります。地球環境を守ることが世界遺産を守ることに繋がります。

「自分には今、一体何ができるのか?」

ひとりひとりがそう考えてみることが第一歩ではないでしょうか。