絶滅危惧種とは?原因と身近な対策

  • エネルギーと環境問題

近年、様々な要因でたくさんの生物種が絶滅してしまい、地球から姿を消しています。

これから絶滅してしまうかもしれない生物たちと、そうなってしまった原因を簡単に紹介します。

絶滅危惧種の動物や植物を守るにはどうすれば良いのか、一緒に考えるきっかけになればと思います。

絶滅危惧種とは

絶滅危惧種とは、生息している数が減っていて絶滅してしまうかもしれない生物種のことをいいます。もう少し詳しく絶滅危惧種について説明していきます。

絶滅危惧種とレッドリスト

絶滅危惧種を語る上で必ずと言っていいほど出てくる「レッドリスト」という言葉。初めて聞く方も多いのではないでしょうか?

絶滅の恐れがある野生生物の名簿のことを「レッドリスト」と呼んでいます。国際的には国際自然保護連合(IUCN)が、日本では環境省やNGOなどが作成しています。今回は環境省が作成したレッドリストに基づいて紹介していきます。

レッドリストの項目

レッドリストでは、①哺乳類 ②鳥類 ③爬虫類 ④両生類 ⑤汽水・淡水魚類 ⑥昆虫類 ⑦貝類 ⑧その他無脊椎動物(クモ形類、甲殻類等) ⑨維管束植物 ⑩蘚苔類 ⑪藻類 ⑫地衣類 ⑬菌類の13ケに分類し、下記9つのカテゴリーで段階的に評価されています。

その中でも、一般的に絶滅危惧種と呼ばれているのは赤色4つのカテゴリーになります。

絶滅(EX) すでに絶滅したと考えられる種
野生絶滅(EW) 飼育・栽培下あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ存続している種
絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) 絶滅の危機に瀕している種
絶滅危惧ⅠA類(CR) ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの
絶滅危惧ⅠB類(EN) ⅠA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
絶滅危惧Ⅱ類 (VU) 絶滅の危険が増大している種
準絶滅危惧 (NT) 現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種
情報不足(DD) 評価するだけの情報が不足している種

絶滅のおそれのある

地域個体群 (LP)

孤立した地域個体群で、絶滅のおそれが高いもの

絶滅危惧種と日本

みなさんは日本にどのくらい絶滅危惧種の動物や植物がいるかご存じですか?

レッドリストの最新版は令和元年に発表された「レッドリスト2020」です。これに掲載しされている生物は8,535種、そのうち絶滅危惧種と呼ばれる生物は3,716種もいます。

絶滅の原因

生物が減少してしまう原因はいくつかあります。その原因とそれによって絶滅危惧種となってしまった動物や植物を併せて紹介します。

採取・乱獲

■アカウミガメ【脊椎動物門 爬虫綱 カメ目 ウミガメ科】絶滅危惧IB類(EN)

漁獲したい生物とは違う種の生物を思いがけず捕獲してしまう「混獲」。

日本に漂流したウミガメの死骸を解剖したところ、主な死亡原因はこの混獲という結果があるそうです。魚を獲る為に設置した網にウミガメ絡まってしまい、肺呼吸ができず、そのまま溺れ死んでしまうのです。これが大きな理由となり、数が減少しています。その他にも産卵場所である砂浜の減少や悪化が原因として挙げられます。

 

■エトピリカ【脊椎動物門 鳥綱 チドリ目 ウミスズメ科】絶滅危惧IA類(CR)

北海道東部の沿岸に多く生息するエトピリカ。アイヌ語で「美しいくちばし」という意味です。北太平洋沿岸域に広く分布するため、世界的に見れば数は少なくないです。しかし、日本に限ってはその個体数が減少し続けています。

減少理由としては、混獲とドブネズミの侵入が挙げられます。ドブネズミは漁船などに乗って、エトピリカの繁殖地に侵入。そのドブネズミがエトピリカをはじめとした野生生物を捕食してしまうのです。他にも、温暖化による海水温上昇で、魚が減ってしまったことなども理由として挙げられます。

 

■ヤシガニ【節足動物門 甲殻綱(エビ綱) エビ目 オカヤドカリ科】 絶滅危惧II類(VU)

日本では、主に沖縄県の南西諸島で生息しているヤシガニ。行き過ぎた採取・乱獲によって、極端にその個体数を減らしています。他にも生息地の減少や、観光地での交通事後で減少していると考えられています。

沖縄県石垣市ではヤシガニを守るために平成23年に「ヤシガニ保護条例」を制定。保護区で2021年度に調査を行ったところ、生息数の減少は確認されなかったそうです。

森林伐採

■シマフクロウ【脊椎動物門 鳥綱 フクロウ目 フクロウ科】絶滅危惧IA類(CR)

大型のフクロウの仲間で、日本では北海道に生息しています。かつては全域で生息していたと考えられますが、現在は道東と道央に限った生息範囲となっています。

産卵などのための巣をつくる天然林が伐採によって減ってしまったことと、エサとなるサケなどの魚が漁業によって減ったため個体の数も減ってしまいました。環境省では保護増殖事業を行っています。

 

■アベサンショウウオ【脊椎動物門 両生綱 サンショウウオ目 サンショウウオ科】絶滅危惧IA類(CR)

日本産の小型サンショウウオで、かなり限定された地域にしか生息しておらず、涸れることのない湧き水のあることが生息の必要条件となっています。

光を嫌う性質があるため、溝の中や落ち葉の下に潜んでいますが、森林伐採による道路の整備が進み生息範囲が狭くなってしまったことが個体数の減少の原因といわれています。また、ゴミの投棄による環境汚染も原因のひとつとなっています。環境省では、保護増殖事業を実施し、調査や環境改善を行っています。

環境汚染

■カブトガニ【節足動物門 カブトガニ綱 カブトガニ目 カブトガニ科】絶滅危惧I類(CR+EN)

三葉虫にもっとも近い現存生物と考えられ、約2億年前からその形をほとんど変えることなく、生きた化石と呼ばれる動物の代表となっています。

かつて、瀬戸内海や九州北部一帯の沿岸に広く生息していましたが、海岸地帯の開発や整備によって砂浜や干潟などが減り、産卵や幼生の育つ環境が少なくなりました。その結果、絶滅危惧種となるまで個体数が少なくなってしまいました。

 

■タガメ【節足動物門 昆虫綱 カメムシ目 コオイムシ科】絶滅危惧II類(VU)

日本でもっとも大きい水生昆虫であるタガメ。1950年代までは広い地域でふつうに見られた昆虫でしたが、1980年ごろまでには大部分の水田やため池からその姿を消してしまいました。

農薬などの水質汚染にとても敏感で、タガメの幼虫はわずかな量の農薬などでも死亡してしまいます。また、開発による生息地の破壊も原因のひとつとなっています。

外来種

■ニホンザリガニ【節足動物門 エビ綱 エビ目 ザリガニ科】絶滅危惧II類(VU)

日本固有のザリガニで、北海道と青森、秋田、岩手の1道3県だけに生息しています。

外来ザリガニよりも弱く生息地を奪われてしまい、そのため個体数が少なくなってしまいました。また、残されている生息地も開発などによって徐々に減ってしまっています。

 

■イヌノフグリ【被子植物 双子葉類 合弁花類 ゴマノハグサ科】絶滅危惧II類(VU)

土手や道端などの草地、石垣の間に生える植物ですが、現在は山間部に行かないと見られないほど少なくなってしまいました。

外国から入ってきて日本に定着・野生化してしまった帰化植物によって生育の場所を奪われてしまったことに加え、アスファルトやコンクリートが増え、土そのものがなくなってしまったことも減ってしまった原因のひとつといわれています。

里山の管理放置

■オオルリシジミ【節足動物門 昆虫綱 チョウ目 シジミチョウ科】絶滅危惧I類(CR+EN)

農作業の機械化により、飼育されていたウシやウマの飼料のための草刈りがされなくなり、オオルリイジミの好んでいた草原環境がなくなってしまったこと、さらに開発によって生息地が減ってしまったことも原因となっています。

 

■オオウラギンヒョウモン【節足動物門 昆虫綱 チョウ目 タテハチョウ科】絶滅危惧I類(CR+EN)

オオルリシジミと同様に草刈りがされなくなってしまい、生息環境であったシバ草原がススキ草原に変わってしまい生息地が減少してしまったことが原因と考えられています。

 

 

すでに絶滅してしまった動物たち

レッドリスト外になりますが、既に絶滅してしまった動物も多くいます。そういった動物たちはなぜ絶滅してしまったのでしょうか。

 

■ニホンカワウソ【脊椎動物門 哺乳綱 ネコ目 イタチ科】絶滅(EX)

かつては本州・四国・九州などの川に生息していたニホンカワウソ。1964年には国の天然記念物に、翌65年には特別天然記念物に指定されましたが、1979年に記録されて以降、確実な生息情報がないため、絶滅したと考えられています。

絶滅の理由は、毛皮目当ての乱獲と水質汚染などとされています。

 

■ニホンオオカミ【脊椎動物門 哺乳綱 食肉目 イヌ科】絶滅(EX)

ニホンオオカミは、東北地方から九州まで各地に生息していたと言われています。1905年1月に、奈良県鷲家口で捕獲された若いオスを最後に、現在まで確実な生息情報がなく、絶滅したと考えられています。

開国以降、西洋犬が大量流入し狂犬病などの病気が大流行したこと、家畜を荒らす害獣とされ、徹底的に駆除されてしまったこと等が、絶滅理由として考えられています。

北海道に生息していた別亜種「エゾオオカミ」も、害獣とされ1894年前後に絶滅したとされています。

 

わたしたちにできる絶滅危惧種対策

自分を取り巻く環境に疑問を持ってみましょう。何気なく使っている紙や、毎日食べている食品。これらは一体どうやって作られ、どうやって自分たちの手元に届いているのか。絶滅危惧種だけではなく環境問題も、自分たちの普段の生活に間接的につながっています。

地球環境を守ることが、絶滅危惧種を守ることに繋がります。

絶滅危惧種たちを守るのは会社でもなく、行政でもなく、学校でもありません。一人ひとりの意識が大切です。