2050年には世界的な食糧不足に!?~輸入に頼る日本は危ない~

  • エネルギーと環境問題

約25年後には世界の総人口が100億人近くになると予測されています。それに伴い食糧不足が危惧されていることをご存じでしょうか。

他人事と捉えている方は要注意。日本の食料自給率は40%ほどしかないのです。食糧不足の現状と解決策、私たちにできることについて解説いたします。

現在の飢餓人口

日本はとても豊かな国です。そのため「世界には飢餓で苦しむ人々がいる」と聞いてもピンとこない方やどこか他人事のように捉えてしまう方も多いでしょう。

 

2022年に発表された国連の統計では、現在世界中で飢えに苦しむ人は7億3,400万人。

2019年に発表されたデータより1億2,200万人も増加しています。

国連などの機関が発表した「世界の食料安全保障と栄養の現状」によると、世界人口の29.6%、24億人ほどが食糧へのアクセスが制限されているそうです。この中には、複雑化している紛争において深刻な食糧不安に直面している約9億人が含まれています。

 

このように莫大な人々が飢えに苦しんでいたり、飢えに対して不安を抱えていたりする「飢餓状態」となっており、飢餓は原因によって種類が分かれます。

 

皆さんが想像している「飢餓」はどちらに当てはまるでしょうか。

突発的飢餓

戦争や自然災害など突発的な事項により一時的に食糧不足になってしまうのが「突発的飢餓」です。

 

日々、ニュースでも外国の紛争問題について取り上げられていますが、このような原因での飢餓はこちらに含まれます。

紛争や災害では農地や家を捨てて難民キャンプに避難する方も多いです。しかし、キャンプでは食糧の供給が間に合っていないことがほとんどです。無事に帰れたとしても、元の生活に戻るためにはたくさんの時間が必要となり、食糧不足は深刻になります。

 

このような突発的飢餓には、原因が緩和・解決されるまでの間、食糧支援が必要となります。

慢性的飢餓

突発的な飢餓と異なり、継続的に食べ物を手に入れることができず、慢性的に栄養不足となってしまうことを慢性的飢餓といいます。

 

飢えに苦しむ人はこちらの割合がほとんどですが、あまり注目が集まっていないのが現状です。

農業の生産性の低さや、雇用賃金の低さなど地域の課題だけでなく、不平等な貿易の仕組みがまだ残っているというような全世界規模での課題が原因となっています。

政治や教育などさまざまな要因が複雑に組み合わさっていることや、死因が餓死ではなく栄養不足による病死であることから緊急性に乏しく、解決が後回しにされてしまっています。一時的な食糧支援では解決が難しいため、自立の支援が必要です。

なぜ飢餓が起こってしまうのか?

これほどまで文明が発達しているにも関わらず、なぜ飢餓は起こってしまうのでしょうか。

 

・インフラ不足

インフラストラクチャー(=インフラ)とは私たちの生活や産業を支える基盤のことです。

慢性的飢餓に苦しむ地域は、発展途上国がほとんどで、多くはインフラ設備が整っていません。

現状では食糧の年間生産量は総人口の約2倍と言われており、実は食糧自体が枯渇しているわけではありません。しかし、物流のインフラが整っていない途上国まで届かず、必要な人に行き渡っていないのです。

 

・貧困

農業を主な産業とする国は貧困国となっている場合が多いです。

貧困が原因で、農業のための土地や水、苗や種などのための資金が足りず自給自足ができません。食糧を買うお金も少なく、飢餓から抜け出せなくなっているのです。

また、教育を受けられる子どもも少なく、他の職業に就き貧困から脱出することも難しくなってしまっています。このような連鎖が原因で、飢餓から抜け出せない人々は多くなってしまっているのです。

 

・紛争

連日、諸外国の紛争についてのニュースが流れていますね。

飢餓人口は近年減少していたにも関わらず、再度増加傾向にあるのは紛争が原因とされています。

国際農林業協働協会より)

 

7億人以上いる飢餓人口の半分以上が、紛争地域に住んでいるとされており、深刻な食糧不足の原因が紛争であることが分かります。

難民となった場合は、家や農地など全て捨てて避難します。難民キャンプでは食糧が少なく多くの人が栄養失調に陥っており、飢餓人口を減らすためには紛争の解決も非常に重要となります。

日本でも起こるの?

インフラが整っていて、紛争も身近ではない日本では飢餓や食糧危機は起こりえないような問題だと感じます。確かに「食糧が足りない」という事態が起こる可能性は正直低いとされています。

 

しかし、食料自給率が低い日本は食糧の供給を海外依存しています。そのため、日本周辺や輸入国で紛争が起きた場合、深刻な食糧危機が起きると想定されます。実際、終戦直後は食糧が足りず、周辺の国からの輸入も止まっていました。

輸入が止まるとどうなる?

農林水産省のデータによると、2021年度の日本における食糧自給率はカロリーベースで38%しかありません。また、畜産動物を飼育するための飼料自給率は25%となっており、ほとんどが輸入に頼っていることが分かります。そのため、輸入が全てストップしてしまった場合、畜産業は壊滅してしまいます。

 

輸入の停止が長期間になった場合、現在の食料自給率では国民全員に豊かな食糧は行き渡りません。その場合、食糧の価格が高騰し貧しい人から餓死してしまいます。

 

人々が生き延びるためにはお米といもが主体の食生活になることが予想されますが、お米主体の食生活になると、ビタミンB1が不足し脚気という病気になりやすくなります。脚気は手足のしびれや心不全などを引き起こす深刻な病気です。

 

このようにさまざまな要因で輸入が止まってしまった場合、日本でもパニックが起きてしまう可能性があります。

新たな飢餓が増加

日本国民みんなが困るような食糧危機の可能性は低いと説明しましたが、実は現在進行形で起こっている飢餓問題があります。それが「相対的貧困層の飢餓」です。

相対的貧困層とは、一定の収入水準以下の生活を送っている層のひとたち。日本の相対的貧困層の基準は年収127万円以下とされています。

 

令和4年度の厚生労働省発表の「国民生活基礎調査の概況」によると、相対的貧困率は15.4%で、約2000万人の人が貧困に苦しんでいるとされています。さらに子どもの貧困率は11.5%となり人口の約7人に1人の子どもは貧困に苦しんでいるのです。

 

見た目では貧困と分からない場合が多く、いじめなどを避けるために口にしない子どもが多いため、あまり身近に感じられないかもしれません。

 

しかし、こうした貧困は子どもたちの成長に関わるだけではなく、学習の機会を逃すことで就職に影響が出てしまうことも危惧されています。そうした場合、税金・社会保障の支払いが滞り、結果的に日本の経済損失が40兆円以上になるとされています。(日本財団レポートより)

 

各世帯の貧困については「他人事」として捉えてしまいがちですが、私たちに直接関係する税金・社会保障に大きな影響があることを知ると「自分事」として考える人も増えるのではないでしょうか。

たんぱく質危機について

世界における人口増加で心配されているのは食糧が足りなくなる「食糧危機」だけではありません。「たんぱく質危機」という言葉をご存じでしょうか。

 

これは、人口に対してたんぱく質の需要と供給のバランスが崩れてしまうことで、プロテインクライシスと呼ばれることもあります。急速に増える人口に対し、必要なたんぱく質を供給できず、たんぱく質不足になるのではないかと欧米を中心に議論されているのです。

 

現状、たんぱく質の摂取はお肉に大きく依存しています。しかし、お肉の生産には膨大な土地や水、穀物が必要となり持続可能ではないとされています。

(参考:「牛のゲップは温室効果ガスが多い!?畜産業と地球温暖化」)

 

お肉の生産量を増やすことには限界があるため、環境負荷が少ない代替品でたんぱく質を摂取できるよう研究が進められています。

代替食品

お肉の代替食品として代表的なものは「代替肉」「昆虫食」など。それぞれ特徴を説明いたします。

 

・代替肉

プラントベースの原料でお肉に似た味、食感を楽しむことができる代替肉。「大豆ミート」は代表的な代替肉です。皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

プラントベースの代替肉は通常のお肉と同程度のたんぱく質を含んでいますが、カロリーや脂質はお肉よりも少ないのが特徴。さらにお肉には含まれない食物繊維が豊富な点は大きなメリットと言えるでしょう。

 

・昆虫食

イナゴや蜂の子の佃煮は昔から日本で食されていますが、昆虫はたんぱく質が豊富な食品として注目を集めています。たんぱく質だけではなく、ビタミンやミネラルも多く含まれており、さまざまな商品が出てきています。さらに生産効率が高く、環境負荷も低いため有効な選択肢として多くの企業が研究を進めています。

培養肉

培養肉とは動物の細胞を培養することで得られる食肉です。

 

「代替肉」は他の食品でお肉に似た味・食感を再現していますが、こちらは動物の細胞から生まれる「本物のお肉」なのです。培養肉は研究室で作られるため、実際の動物を殺さず本物のお肉を楽しめることは大きなメリットです。日本における培養肉はまだ開発中となり、安全性などのルールづくりはまだまだこれからと言えます。

 

しかし、2040年には世界の食肉市場の35%が培養肉となる可能性も高いというレポートもあり※、大注目を集めていることには間違いないでしょう。

※参考:A.T.カーニー

SDGsとの関係

持続可能な開発を実現するため2030年までに17の目標達成を世界で目指すSDGs

その目標の中に、飢餓に関する項目もあることをご存じでしょうか。

 

目標2:飢餓をゼロに」という項目です。

SDGs達成のためには飢餓問題の解決が必須となります。しかし、世界規模の大きな目標となり、私たち個人ができることはないように感じてしまいますよね。

 

しかし、個人でもできることはたくさんあります。

私たちに出来ること

食糧危機、飢餓問題の解決のために私たち個人ができることはたくさんあります。

 

・フードドライブを活用する

フードドライブとは、家庭で余っている食べ物を学校・職場などで持ち寄ってまとめ、地域の福祉団体や施設などに寄付する取り組みです。

いただきものが余っていたり、買いすぎてしまったりする食品を寄付することで、人を助けられるのです。

学校・職場単位でなくとも寄付できる場所も多いため、個人で活動したいという方は地域のフードバンクや子ども食堂などに問い合わせてみることをおすすめします。

 

・地産地消を心掛ける

地域の生産物を、その地域で消費する地産地消は環境への負荷が少なくなります。

その理由は、配送時に発生するエネルギーを減らすことができるため。さらに生産者と消費者を結びつけることで地域の活性化にも繋がります。

 

環境負荷を減らすことは、異常気象の緩和に繋がり、突発的飢餓で苦しむ人々を減らすことにも繋がるのです。

 

・食品ロスを減らす

食品ロス(=フードロス)とは、本来食べることができる食品を廃棄することです。売れ残りや食べ残し、賞味期限切れの食品などを捨てることはもったいないだけではなく、環境に悪い影響を与えます。食品を捨てるということは生産時に使用した水・資源を捨てることなのです。

国連WFPによると生産されている食糧のうち3分の1が食品ロスで捨てられているそうです。

私たちひとりひとりが削減に努めれば、食糧とそれに費やす資源の無駄をなくすことができるのです。

 

 

このように個人でも取り組めることが多くあります。できることから少しずつ一緒に頑張ってみませんか?